キリマンジャロのアホ


序章:日常に不足したもの

本編:キリマンジャロのアホ
後記:登頂したい人たちに    

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2000.09.20
山頂の屍 

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隊列は動き始めた。
ガイドのフィリックスを先頭に、御隠居・ドーネン・神様・ZAKIが続く。
ガイドが、登頂を許可したということは、Uhuru Peakへ本当に行けるということなのだろう。
感動で涙がにじみ始める。
「前を歩く御隠居・ドーネン・そして神様に励まし続けてもらったおかげだ」と、思うと感謝の気持ちで胸がいっぱいだった。
特に、神様の「山は気合だ」という言葉が、今日のこの苦しさを乗り越えさせてくれたのだろうと思う。
山頂の紫外線は強烈である、皆顔の色が変わり始めている。
左手に氷河を眺めながら隊列は進む。

ふと、神様が隊列の最後尾に移動した。
「ああ、神様は素人の私を心配して最後尾を歩いてくれるのだな。」
「なんて、いい人なのだ」と思った。
しかし、5分後に異変は起きた。
最後尾を歩いていたはずの神様がいない。
なんと、神様は100Mほど後方で熟睡中だ。
このまま、黙っていれば冒頭の内容は成立したことになる。
「キリマンジャロは標高5896メートル、雪に覆われた山で、アフリカの最高峰と言われている。その西の山頂は、マサイ語で”ヌガイエ・ヌガイ”、神の家と呼ばれているが、その近くに、干からびて凍りついた、ひとりのアホの屍が横たわっている。それほど高いところで、アホが何を求めていたのか、説明した者は1人もいない。」
フィリックスが、神様の所まで戻って彼を起こす。
Uhuru Peakまで、あと30分ほどのはずだ。

しかし、神様が最後尾に移動したのは、私のためでもなんでもなく、ただ高山病で眠かっただけか?
感動をかえせ!