キリマンジャロのアホ


序章:日常に不足したもの

本編:キリマンジャロのアホ
後記:登頂したい人たちに    

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2000.09.19
キボ・ハット(4,703M) 地獄の高度順応 

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ストックにもたれるようにして、キボ・ハットに到着した。
6時間ほど歩いた。
神様・ドーネン・御隠居は既に十分な休息を取っているようだ。

私は、とにかくできうる限りの調整を行わなくてはいけない。
大量の暖かい紅茶と数枚のビスケットを飲み込んだ後に、アタック用のフリースのインナーパンツを装着した私は、神様・ドーネンと共に高度順応に出発した。

アタックのコースは、最初から急勾配が続く。
可能な限り大げさな呼吸法を採りながら、ゆっくりと上り始める。
150Mほど登ったところの、大きな岩が目標だ。
神様は、軽い足取りで登り続けて行く。
ドーネンは少し苦しそうだ。
私は、「1歩」と言う歩幅を維持することができない。
半歩ずつ歩くことを学ぶ。
しかし、どんなにゆっくり歩いても、心拍数が上がり始める。
「まだ、今じゃない。」と、自分に言い聞かせながら、ゆっくりゆっくりと登る。

調整を終えて立ち止まるドーネンを抜き、神様の待つ大きな岩のある場所を目指す。
1時間後、やっと調整ポイントに到着する。
神様が、努力をたたえてくれる。
後は、横向きに高度を維持しながら移動して調整だ。

キボ・ハットに戻り、明日のことをシミュレーションしてみる。
キボハットは4703M、明日の登頂証明ポイントであるギルマンズ・ポイントは5,681Mである。
AM8:00には、下山の指示が出されるだろう。
従って、ウフル・ピーク(5,895M)を登頂するためには、AM6:00までにギルマンズポイントを通過する必要がある。
つまり、先ほどのトレーニング(ほぼ全力を出し切った状態)で約150Mの上昇に1時間を費やしたと言う事は、残念ながら合格タイムではないのだ。
ショックであるが、事実は事実だ。
今夜の起床は、PM23:30。出発はAM0:30だ。
それまでに、少なくとも今よりは高度順応レベルを上げることが、登頂成功の条件である。