潮流とうねりがぶつかり合い、複雑な波が船体を激しく叩く。
                  渡嘉敷島の北端に差し掛かる頃、再び「まいふな」山城艇長が「ニヌハ2」の風上に襲いかかる。
                  しかし、この場所の岩陰は風裏になる。
                  風上が有利とは限らない。
                  風下に進路を変え、岩との距離を稼いで帆の上端に風を入れニヌハ2を加速させる。
                  古式サバニに果敢にチャレンジする山城艇長に敬意を表しつつ、ここからは前を走らせていただくことにする。
                                  儀志布島の北端を抜ける頃には、島に沿って流れるアビーム(横風)が入る。
                  ニヌハ2が最もスピードに乗れる風向きだ。
                
                
                
                  【R-4.1】
                  ・ 誤算
                    強風が吹けば、セーリングが重要なレースになると思っていた。
                    エイクよりも、帆の力に頼るものだと思っていた。
                    しかし、初めて上位グループに食い込んで分かったことがある。
                    上位グループはどんなに風が吹いていても、エイクの力を抜かないと言うことだ。
                    今やニヌハ2のGPSが示す速度は、私が作成したどの計画数値よりも速いものだった。
                    置かれた立場が選手を1つにまとめている。
                    全員がスーパーアスリートに変身した瞬間だった。
                  
                   
                
                
                
                
                  引用:「不良のアウトドア」